■傾斜地での設計施工例


「どうですか?やりがいあるでしょ。」
お施主さんと同行して敷地を見たときは
「やりがいありますね。」
簡単な答えですが自信を持って答えたのです。
その敷地は丘のようにこんもりと盛り上がった
高台にありました。
東にも南にも傾斜している敷地
斜めになっていない箇所がなかったのです。



北から南に傾斜しているなど一方向の傾斜地は過去にも設計していました。
こうした敷地の場合排水をどうするかが悩みの種になります。
幸いにも隣地境界に側溝を設ける事で排水計画ができそうでした。
あとは道路からの車の乗り入れです。
2台分のガレージに3台分の屋外駐車場
道路は全部傾斜しています。
たいていの場合多くて2台、もしくは3台
これにはかなり頭を悩ませました。
実際敷地を計測して
データを見てもどこからも車が入れにくいのです。



そして、傾斜地の醍醐味と言えるレベル差です。
便宜上、1階、2階などと決めて設計はしますが
実際基準となる高さは誰も教えてくれないわけです。
かなり強い意思をもって基準となる高さを設定しないと
いろんな人の意見で覆されてしまうのが傾斜地の設計なのです。
自信を持って各フロアの高さを決めてつなぐ為には
何度もその家のことを頭で思い浮かべて設計しなければなりません。



手がかりはガレージのレベルです。
そこからガレージの見える中庭、書斎、リビングの高さを決定
傾斜地での設計の回答はマニュアルにはありません。



リビングとダイニングは傾斜地の為スキップフロアにしました。
玄関をどこにするかでは私にはあるイメージがありました。
玄関から中庭が見おろす事ができて
だんだんリビングダイニングに下りる
ドアを開けて玄関に入ったとき様々な部分が
目で見て期待できるプランニングでなければならなかったのです。



でも、今回の敷地はどこも傾斜している。
イメージを施主に伝えるのは至難の技です。
模型やスケッチ、CGなどで伝えていく事しかできません。
玄関を入って階段を下りるとダイニングへ行きます。
この時点で普通の家では考えられないような説明の難しさが生じます。
だんだん下りていく、そんなプランはそうはありません。



でも中に入って外が気持ちよく見えてくる傾斜地のよさを
私は過去の設計と実績で知っていました。
私の体験やイメージを語って伝えていくしか方法はないのです。
一つ一つの段差について意味を考え
窓から見える景色についても解説すること
傾斜地での設計はイメージと経験を土の上に載せていく作業なのです。

傾斜地の設計: 建築家 信太淳英
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